2/20
前へ
/20ページ
次へ
ーーもし今、自分が自分じゃない何かになれるのなら、僕はー… 放課後の教室。 この人気のない薄暗い教室の雰囲気が好きだ。 グラウンドからはサッカー部の掛け声が聞こえてくる。最近、席替えで窓際の一番後ろの席になったばかりだ。授業中の居眠りには慣れたものだが、この席は運が良い。プリントを後ろに回す面倒もないし、幸いにも自分のロッカーが真後ろにある。登校してから帰るまで無駄な移動をしなくていい。 学校なんてただの暇潰しだ。 あいつが居なければ来る意味もない。 ぼんやりと隣の窓を見やると、窓に映った自分と目が合った。端麗な顔立ちだと言われるけれど、どこか寂しさを宿した瞳。ひどくくたびれた顔をしている。 前髪は随分伸びてしまって、茶色に染められた髪の毛はプリンになってしまっていた。 「そろそろ手入れしないと怒られるかな」 ふぅ、と溜め息をつき、そのまま机に突っぷする。 あいつが来るまでまだ時間がある。 髪の毛に特にこだわりはないが、あいつが好みそうな色と髪型を頭の中でイメージしてみたり、今日の夕飯の事を考えたりしているうちに、意識を手放してしまった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加