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ーーもし今、自分が自分じゃない何かになれるのなら、僕はー…
放課後の教室。
この人気のない薄暗い教室の雰囲気が好きだ。
グラウンドからはサッカー部の掛け声が聞こえてくる。最近、席替えで窓際の一番後ろの席になったばかりだ。授業中の居眠りには慣れたものだが、この席は運が良い。プリントを後ろに回す面倒もないし、幸いにも自分のロッカーが真後ろにある。登校してから帰るまで無駄な移動をしなくていい。
学校なんてただの暇潰しだ。
あいつが居なければ来る意味もない。
ぼんやりと隣の窓を見やると、窓に映った自分と目が合った。端麗な顔立ちだと言われるけれど、どこか寂しさを宿した瞳。ひどくくたびれた顔をしている。
前髪は随分伸びてしまって、茶色に染められた髪の毛はプリンになってしまっていた。
「そろそろ手入れしないと怒られるかな」
ふぅ、と溜め息をつき、そのまま机に突っぷする。
あいつが来るまでまだ時間がある。
髪の毛に特にこだわりはないが、あいつが好みそうな色と髪型を頭の中でイメージしてみたり、今日の夕飯の事を考えたりしているうちに、意識を手放してしまった。
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