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「理屈なんかわからない。ただ自分の心に従って、助けられそうだったから、助けた。それだけだ」
「……そうか。なら、私の目指す姿と、近いかもな」
どことなく満足したような返答から程なくして、規則正しい寝息が聞こえてきた。
疲れたのだろう。
――起こすのも気が引けて寝かせっ放しにしていたら、交代時間ちょっと過ぎに勝手に目を覚ましてきて叱られたのは、この少し後の話だ。
◆ ◇ ◆
――場面は変わり、地表。
ラーク=オーディンは誰とも群れず、一人歩んでいた。
今やコルーテの名所の一つとなった辺り一帯の光景は、やはり異様だった。
墓標のように数多にそびえる、大孔が穿たれた岩塊の柱。深く抉られた大地は、いまだ癒えぬ傷跡を風に撫でられて甲高い悲鳴を上げている。計り知れない力同士が幾度もぶつかり合ったことで、周辺の地形そのものが書き換えられていた。
ここは英雄と魔王が最期を迎えた、《戦場跡》。
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