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階段を上っていき、その姿が完全に見えなくなって、ようやく緊迫していた空気がしぼんだ。
俺はおずおずと口を開き、
「あ、ありがとう……。アイツ、いきなり暴力とか本気で洒落にならない」
「……フン」
礼を受けたアリエスはしかし、どこか不機嫌そうに俺を押しのけて、自室へと帰っていった。
重厚な扉がこれ以上の会話を拒絶するように勢い良く閉まり、夜虫の鳴き声だけが寂しく耳朶(じだ)を打つ。
俺は頭をかきむしって、ただ一言呟いた。
「……なんなんだよ」
じくじくとした痛みは、当分引いてくれそうもなかった。
――3. Entrance ceremony and…… 完 ――
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