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「しかし、クレープシュクレ、か……甘いらしいな」
確か、クリームと果物をごてごてと盛り付け、薄い生地で巻いた高級甘菓子だったはずだ。
俺はといえば、見た目の華やかさ通り高飛車な値段してやがる、という身も蓋もない所感を持っていたため、手を出したことはなかった。というか、学園の食堂でパフェがあるのにわざわざ出かけなくても、と思わなくもない。
「また随分と雑な知識だが……食べたことないのか? 私の好物なんだ」
「ない。でも、ラグズ家ご令嬢の好物って触れ込みならちょっと気になる。俺も行ってみたいな」
「へ?」
この何気ない発言にアリエスは――なぜか驚いたような、焦ったような、とにかく、よくわからない表情を浮かべた。
――……男一人で甘い物を食べに行くのは、それほど滑稽なのだろうか? もしかすると、《女子力》とやらを試される店なのかもしれない。
いまいち釈然としない俺をよそに、
「……じゃあ、えと……今度の休日にでも……」
アリエスはもじもじとそう応えた。
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