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もどかしくて居ても立ってもいられない、というただそれだけの純粋な動機を、メルは軽率だと蔑ろにできなかった。
しかし、
「アタシとしても、アナタ達の気持ちは汲んであげたいし、実力も買ってはいるんだけどね……。ただ、一連の騒動がSランククラスの魔物によって引き起こされたものだとするなら、やっぱり捜索の許可はできないわ」
「ま、魔物が原因なのですか!?」
それは、家畜飼いの子供を救出後、アリエス=ラグズへの救援を即座に決行した自警団部隊の報告により確定したことだった。
地表付近でラプタ・ウルフと交戦するゴーレム種を観測し、そこから辿った手掛かりからクリスタル・ジャイアントの存在を推測させる痕跡を見つけ出したのだ。
その時点で、自警団部隊はアリエスの救援を断念して街へ帰投した。異議は誰も口にしなかった。自己満足で深追いし、情報を抱え落ちして死ぬなど言語道断だとわかっていたからだ。
全ての人間が英雄になれるわけではない。
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