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ソラは口を尖らせた。とはいえ、これ以上の譲歩は見込めないということも悟ったのだろう。肩を落とし、なら仕方ないか、とクゥトに顔を向ける。
「やれやれ」
諦めた様子だった。
――ただし、〝穏便に済ませるのを〟と最初につくが。
「クゥちゃん。ちょっと席を外してくれない?」
クゥトはソラの考えをすぐに察した。
「ソラくん……クゥは、あまり……」
「心苦しいけれど、友人を助けるためでもあるしね。それに、ボクのわがままにキミ以外を巻き込むのも本意ではないのだし」
「……わかりました。じゃあ、部屋の前にいます」
「ありがとう」
訝しむメルをよそに、クゥトが退室した。去り際、彼女が「ごめんなさい」と声もなく口にしたことに、メルは気づけなかった。
「……さて」
「ハインド君はまだなにかあるの? もしかして、色仕掛けでもしてくれるのかしら?」
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