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「参りました。どうもボクは、貴女の実力を見誤っていたらしい。一流の魔術士を相手に、下策でした」
「御託はいい。質問に答えなさい、ソラ=ハインド」
鋭く言われ、ソラは深々と頭を垂れた。
「……ボクが何者かは、お答えできません。無礼なことをしたのは謝罪します。本当にすみませんでした。……ただ、手段を選んでいられなかったのです」
「……なんでそこまでして?」
「先程申し上げました通り、友人が心配だからです」
「えぇ、きっと嘘じゃないんでしょう。でも、それだけでもない。……頭、上げて」
と言いつつ、杖は構えたままだ。気を緩めてもいない。
すっと手を差し出す。
「没収よ、危なっかしい」
調べたところで何か掴めるとは思えなかったが、さすがに違法性が疑われる魔道具の所持は看過できなかった。
ソラは素直に従い、メルに指輪を渡す。紫毒色の宝石を散りばめたそれは、蠱惑的な光を発していた。見たこともない材質だ。
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