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「さて、どうでしょう。ボクは確かに先生の言う通り、善意から他者を救わないのかもしれませんが、悪意から他者を害することもしませんよ。そういう意味では今のところ人畜無害と言えるのでは?」
「無害、ねぇ……」
「許されなくても、嫌われても別に構いません。ボクの行動原理は少しばかり欲望に忠実過ぎて、他人にとって受け入れ難いものだという自覚はありますから」
メルは決めかねていた。
ソラ=ハインドは底が知れない。それはひどく恐ろしいことのように思えた。
思い通りにならないならいっそ人心を操ってしまおうという、突拍子もないことを平然とやってのける。しかし、敵意や殺気といった刺々しさはまるで感じられない。かといって、信用できるかどうかは全くの別問題だ。
不気味だ。
然るべき処置を取るのが、やはり正しい。捕縛と尋問をもって不確定要素を解消し、結果として不穏分子と判断されたなら排除も辞さない。真実を追うためには時として冷徹さも求められる。
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