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魔術士団に居た頃、メルはそう割り切っていた。
だが、と思い留まる。
――今の自分は一流の魔術士である以前に、三流の教師なのだ。
それを勘案して、どうするべきか。
結局のところ、この場で見極めるのは難しい。そもそも昔から、天才の考えを推し量れた試しがなかった。
だからこういう手合いは苦手なのだ。
「んんーーー……どうしても、行く?」
「はい、そこは決定事項です。ここに来たのも、黙って行方をくらませては各位のご迷惑になるので、既成事実が欲しかっただけですし」
確かに、自警団の個人に対して抜け道を作ったとしても不自然だろう。仕掛けられたのがメルであったのも納得できるし、その判断は理に適っている。
のだが、なーんか癪に障る。この人を食ったような態度。どこかの馬鹿な賢者を思い出させる。
「ほほう。それでわざわざ形だけの交渉をしにきたと。つまり、アタシの返答なんてはなっからどーでもよかったと。なるほどなるほど」
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