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「あ、あはは……。あぁ、けれど確かに二人だけでは心許ないのも事実。かといって、クラスメートをボクの独り善がりに巻き込むのもしのびない。いやぁ、誰かお目付け役として頼りになる大人が着いてきてくれると、とても心強いのですが」
――全然拒否権がないじゃない……。
芝居がかった大仰な口調にメルはげんなりしたが、盛大に嘆息して、杖の構えを解いた。
凡人の自分にできるのは精々、道を踏み外さないよう傍で見守るくらいだ。まったく、望んだこととは言え、人を教え導く立場は気苦労が絶えない。
上手くいかないものだ。器用なつもりだったのに。
わしゃわしゃと頭をかいてぼやく。
「……アタシのクラス、問題児ばっかね。とびきり優秀なのがかえって厄介よ」
「照れますね。んふふふ」
「いやいやいや褒めてないから! ……どっちみち、放っておくほうが危なそうだし、同行するわ。……アタシも、気がかりじゃないとも言えないしね」
「ありがとうございます」
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