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現行戦力では討伐不可能――その危険度は、Sランクを超えた〝唯一のXランク認定〟を受け、災害と同列とみなされた。
しかし、暗澹たる時代は英雄・クロガネの手により終止符を打たれる。
人々はその報せに歓喜し、英雄を称え、連日のように祝杯をあげて浮かれていた。
だが――彼は違った。
ただ一心に胸に抱いていた憎悪の白い火焔。その矛先を突如失い、残ったのは行き場をなくして荒れ狂う力だけだった。
殺して、殺して、魂を摩耗させるように殺し続けて、積み上げた屍を憎しみの炎に焚べる日々が続いた。だが、幾千に登る魔物を屠っても少しも満たされない。どれだけこの身に血を浴びても、渇くのだ。
終わりなどないのかもしれない。それでも、死肉さえ喰らう獣のように、彷徨うことをやめなかった。
やめられるはずがなかった。
次はどうだ。
じきにここへ現れる敵を滅ぼせば、何かが変わってくれるのだろうか。
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