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あるいは――あの気に入らない目をした英雄気取りに、絶望と苦痛を与えて消し去ってしまえば、少しは気が晴れるだろうか。
わからない。
ただ一つ確かなのは、破壊を求めるこの衝動をもはや誰にも止めることはできないということだ。
いまや、彼は《最強》となったのだから。
証立てるように地面に突き刺した銀槍を指先でなでると、拍動する白焔の魔力が地の底へと伝わっていった。
昨夜から何度も繰り返しているこれは、魔物をおびき寄せるのによく使う手だった。
頃合いだ。
応答は小刻みな震動。陽光が薄雲に翳った全天の下、うねりが迫ってくる。
もうもうと砂塵を巻き上げて進軍してくるのは、〝陸地を埋め尽くさんばかりの水晶戦士の大軍勢と、その奥に控えた巨躯の王〟。
動揺も、焦燥も、恐怖も感じない。
ラーク=オーディンは、屠るべき敵を淡々と迎えた。
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