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◆ ◇ ◆
「なんですか、あれ……!」
戦場跡を一望する小高い丘陵からクリスタル・ゴーレムの大軍勢を見たクゥトが、かすれた声で叫んだ。
「あんな、あんな数の魔物が街までくれば、大変なことに……っ!」
彼女の抱く危惧はもっともだ。コルーテの街が保有する迎撃術式は、多くの都市と同じく、局所的な瞬時発動型。無論、ゴーレム種用に特化しているわけでもない。侵攻されれば、防衛網の穴から数に任せて押し切られてしまうことは想像に難くなかった。
「レイリスさん、取り乱しても状況は好転しないわ。できることを考えましょう」
「っ……わかってます、ごめんなさい」
小さな体に戦慄を押さえ込んで、健気に言う。メルは改めて状況を分析した。
最悪の一つ手前、というのが現状だ。
不幸中の幸いというべきか、クリスタル・ゴーレムが最初に目撃された地点よりも、ここは街から距離が離れている。
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