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ならば猶予はまだあるはずだ。いよいよとなれば、街から全町民を退避させ、消耗を極力抑えた遅延戦闘や進路誘導という方針も取れるだろう。
偵察を兼ねてじりじりと移動しながら二人にそのことを伝えたところで、あっ、とソラが見知った人影に気付いて声をあげた。
「……先生、あそこにいる銀髪の人、探してた行方不明者にして我がクラスの誇る筆頭問題児サマだとお見受けしますが、どうします?」
「……あとでめちゃくちゃ説教する」
「あとで、があるといいですね」
「縁起でもないこと言わないで」
ともかく、と丘陵から降り、銀髪金眼の少年のもとへ駆け寄る。
「ラーク=オーディン!!!!」
名を呼ぶ声を張り上げたのはメルだ。首だけ巡らせて黄金の瞳が一行を一瞥する。
「あァ、テメェらか」
返した言葉はそれだけだ。すぐに興味を失ったように、前方に向き直る。
「ラークくん……どうして……」
ソラが無言でクゥトを止める。今は先送りするべき、と言外に伝えていた。敵を前に悠長に問答する暇はない。
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