10228人が本棚に入れています
本棚に追加
口上などなくとも理解できた。信じがたくとも予想できた。空間を捻じ曲げ、吹き荒れる魔力が雄弁に語る。
――こいつらでは脅威にすらなりえない、塵芥も同然だと。
「……先生、彼が持っているあの槍は、《グングニル》ですね?」
「……そうよ」
確信を持ったソラの問いに、メルは首肯した。
「それって、まさか、あの……!?」
有名な魔武器だ。ソラだけでなく、クゥトも知っていた。その能力を記した概要があまりに苛烈で、記憶に一際強く残っていたから。
「……なら、この状況は、〝望むところ〟とさえ言えるのでしょうかね。にわかには、信じがたいですが」
《グングニル》。〝必中必殺〟と謳われるその槍には、しかし、追尾や操作といった系統の術式など組まれていない。
なぜか。
なんのことはない。
答えは実に単純明快――〝射抜く的がどこにあろうと関係ない、計測不能の超広範囲攻撃〟こそが、伝説の正体であるためだ。
そして、その所有者は王国最強の戦闘員――。
最初のコメントを投稿しよう!