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――カツン。
何処からか靴音が響いた。
それを合図に、薄暗い筈の瞳の向こうに湖が映る。
――カツン。
そしてもう一度。
靴音が響く度、柔らかな日差しが辺りを包み込み、目の醒める様な色とりどりの緑や花が足元を埋めつくし、蝶が舞い、小鳥が美しい歌声を奏でる。そうして次々と目の前の景色を象っていった。
……知っている。
この景色を誰よりも。
そう感じ取った刹那、一筋の風と共に巨大な廃城が現れた。
覚えている。
この景色こそ"私"なのだと。
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