第5楽章

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「着いた……!」 ようやく見えた町並みに思わずそう声を洩らした。 隣の晋作の顔にも僅かに安堵が浮かんでいる。 「お疲れ様、夕霧」 そう言って私の隣で笑うのは九一。 松陰先生のお墓を改葬してすぐ、久坂は江戸を離れた。 そして私が晋作と一緒に江戸を発ったのは半月程前。 京に入るという晋作が送った文を見て、途中まで迎えに来てくれたんだ。 春を向かえた京は薄紅色の花で染まっている。 風に舞う花びらが町を彩る。 「うわあ……綺麗」 風と共に青空に舞い上がる薄紅色を見上げて呟くと、九一は一層深く微笑んだ。 「時間ができたら、お花見にでも行こうか」 「本当?ありがとう」 晋作が両手を頭の後ろで組んで空を仰ぎながら口を開く。 「花見か、昔よくやったな」 塾にいた頃は、皆でよくお花見に出掛けたりもした。 皆でお弁当やお酒を持ち寄って。 晋作が三味線を弾いて、久坂が吟って、俊輔達が踊る。 栄太が連れて来た妹とも遊んだ。 ……そういえば、栄太にはしばらく会っていない。 「……栄太は元気にしてるかな」
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