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栄太は三年前、突然脱藩して姿を消した。
それ以来文も何もない。
……今何処にいるのか。
「便りがないのは良い便りだというからね。心配いらないよ」
「……うん」
やけに自信有り気な九一の言葉に頷いてちょうど大通りに出た時、通りの先に浅葱色の羽織を着た集団が見えた。
羽織を翻して、颯爽と通りを歩く一団。
町の人々は通りの端に寄って道を開けていて、まるでその集団を避けているようだった。
「九一、あの人達は……?」
「二人共、こっちだ」
九一は私の質問には答えず、私の腕を取って人ごみの中に紛れ込んだ。
人々はその集団を見ながらひそひそと話をしていて、その目からは嫌悪が見て取れた。
「待って九一、あの人達何者なの?」
手を引かれながら尋ねると、九一は歩みを止めずに答えてくれる。
「……やつらは浪士組って言ってね、京の治安維持を目的とした集団だよ。京都守護職は知ってる?」
「昨年置かれたっていうあれか?」
晋作の言葉に頷く時も、九一は足を止めない。
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