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ドン! という激しい音を鳴らして机をたたかれるが、それに動じる事もなくなった。
「何度も言わせるなよ。どうしてお前があそこにいたんだ。早く理由を言ってみろ!」
美樹刑事の前では絶対に見せないような鬼の形相で、太田刑事が俺を睨んでくる。
「……何も言う事はないっすよ」
俺は疲れ果てていた。
まともに受け答えするだけの気力だってないっていうのに、この対応の繰り返しは俺にほんのわずか残っている気力すら奪おうとしている。
ソウマの件で懲りている。
どうせ何を言っても聞きやしないんだ。本当の事を喋れば嘘を言うなって言うし、黙れば喋れという。
本当にどうしたらいいんだ。
俺は太田刑事にばれないようにため息を付いた。
……キョウヤとの電話を切ってから。リュウジさんの家でガス爆発が起こった。
出火元はリュウジさんの部屋から。火元はどうせリュウジさんがタバコでも吸おうとしたか何かで、火をつけるライターには事欠かなかったはず。
だけど、どうしてリュウジさんの部屋から爆発が起こるぐらいのガスが充満していたのか?
それをまともに答えられるヤツは誰もいない。
原因は何か、と聞かれればモバイルゴーストのせいだ、と言うしかないだろう。
つまるところ、俺は間に合わなかった。
キョウヤあたりに言わせれば俺が爆発に巻き込まれなくて良かった、って所だろうか。
俺自身に何事もなくてよかった、モバイルゴーストと再び対峙しなくてよかった……。
そう思って安心してしまう俺がいる。
それが余計に俺を苛立たせた。
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