9章 尊厳という名の抵抗

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『ピピー、ピピー、ピピー』  その音は、キョウヤのポケットから聞こえてきた。その音の意味を、俺とキョウヤは一瞬で理解する。  モバイルゴーストだ。 「……どうやら5文字のメッセージが終わった後は、ただの着信音みたいだ」  キョウヤはそんな事を言いながらポケットから携帯電話を取り出す。  自分宛に命令メールが来たっていうのに、どうしてこうも冷静でいられるんだよ。普通なら焦って携帯電話を落としたりでもしそうなものなのに。  特に俺やキョウヤはモバイルゴーストのメールがどんなもので、それに逆らえばどうなるかを良く知っている。  知っているだけに、恐怖心は普通の人以上のはずなんだけど……キョウヤは淡々とボタンを押して画面を確認する。 「……へぇ」  ――感想は、たった一言だった。 「おい、キョウヤ。MGからメールが来たんだろ? 中身は何だったんだよ」  キョウヤはゆっくりと俺を向くと、静かに口を開いた。 「ごめんね、ナオヤ……どうやら、ナオヤに秘密にしていた事が1つあったみたいだよ」 「秘密? 何を言ってるんだよ。メールの中身は何だったんだって!」 「ナオヤ、1つ教えてあげるよ。モバイルゴーストに勝つ事が出来ないとしても、負けない方法が1つだけあるんだよ」  言ってる意味がわからない。  とにかく、俺はキョウヤに届いたメールの中身を確認するために、キョウヤに近づいた。
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