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俺の脇腹に、キョウヤの拳がめり込む。
「ぐ……」
一度取り出した携帯電話を、わざわざポケットにしまったのも、偽物と交換するためだったのか。
全てがキョウヤの仕組んだトラップだった事に気が付いても、もう遅い。
「その表情からすると、俺が何を考えたか気が付いたみたいだね?」
「キ、キョウヤ……お前……」
俺が受けたダメージは予想以上のものだった。
確かに、これならリュウジさんとまともにやり合えるだけの事はあっただろうな。
最後の最後まで、油断だらけだったことに後悔するが、もう遅い。
俺は立っている事も出来ず、地面に倒れこむ。その真ん前にキョウヤは悠然と立って俺を見下ろした。
「一瞬、ナオヤが反応したのには驚いたよ。隙を付けなかったらこう着状態だったからね。そうなると、携帯電話を奪われたら負け状態の俺には辛かった」
そう言うと、キョウヤは懐から真っ黒な塊を取り出した。
「なんだよ……それ……」
「スタンガンだよ。痛みはない……なんて言えないけど、悪く思わないでよ」
キョウヤがスタンガンを持った手に力を込めると、そこに稲妻が激しい音を立てて走った。
逃げようとしても、体は言う事を聞かない。
必死に足を動かしてわずかばかり後退した俺に、キョウヤは容赦なくその距離を詰めて俺にスタンガンを近づけた。
「ナオヤに少し眠っていてもらうためには、これしかなかったんだよ」
そう言うキョウヤの声は、いつも通り冷静だった。
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