9章 尊厳という名の抵抗

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「ぐ……あ……っ!」  バチバチという音が俺の体のすぐ近くで聞こえる。  人に――ましてやダチにスタンガンなんか押し当ててるんだから、少しぐらい容赦するとか、躊躇するとかないのかよ。  そんな突っ込みを入れるだけの余裕もなく、俺の意識は急激に遠のいていく。 「くそ……何をする、気なんだよ……」 「もしも、モバイルゴーストが再び現れるような事があったら、その時は頼んだよ」  その発言、どういう意味なんだよ。  もう声を出そうにも、口もまともに動かない。 「モバイルゴーストに負けない方法……それはね、尊厳という名の抵抗をする事なんだ」  何言ってるんだよ。頭の悪い俺にはさっぱりわからないっての。  尊厳? 何だよ、それ。  どうして、こんな大事な時でも、キョウヤは全てを俺に教えてくれないんだよ。  くそ……くそ……俺の体、動いてくれっ! 「じゃあね、ナオヤ」  キョウヤの足音がどんどん小さくなっていく。  それは俺自身がまともに音を聞きとれなくなっているからなのか、それともキョウヤがどこかに向かってしまっているからなのか。  結局、俺は何もわからない。  キョウヤを追いかける事すら出来ない。  ……最後には悔しさすら感じるヒマもなく、俺の意識は闇へと沈んでいった。
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