12章 究極の、選択

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 ガタガタと揺れる車に乗って、早2時間が経過しただろうか。  いつものスポーツカーとは違う。今日は人数が多いからと木之本は大人数が乗れるワゴンを借りてきていた。  運転席には、退屈そうに前を見ながら、タバコをふかしつつハンドルを握る木之本の姿がある。  その後ろに俺とカオリとミキが。  さらに後ろの席に……ヨシタカの両親が座っている。  ヨシタカの母親は、昨日手に入れた戦利品を両手に抱えて祈るように目を瞑っている。  父親は両腕を組んで黙って窓から見える外の景色を眺めていた。  昨日、ヨシタカがいじめられていた場所――そこに向かった俺達が見たものは、がらんとした空間だった。  そこにはイジメをするヤツも、されるヤツもいない。足を踏み入れられなくなったこの場所は、時間が止まったかのように静かだった。  その空間の真ん中に、ひっそりと置かれていたのが、今ヨシタカの母親が手にしているものだ。  ――失われたはずの骨壷。それが、まるで死者を弔う花瓶のようにあった。 『明日、岬で待つ。そこで真実を問う』  骨壷に書かれた文字が、それだった。モバイルゴーストが指定してきた最後の場所。  ヨシタカの両親に確認して、モバイルゴーストが指定しているのがどこの岬なのかはすぐにわかった。  いつか、家族旅行をした時にヨシタカが景色が綺麗だと言って気に入った岬があったのだ。  そして、今日――最後の日を迎えた。
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