17章 ようこそ、新たな絶望へ

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「ま、一度に全部を知るのは無理だろ。こっちも時間がないしな」  ナオヤは横目で何かを確認しながら言った。視線の先を無意識に追いかけてみたが、そこにはさっきのスーツ姿の男がいるだけだった。 「さっぱり要領を得ない。不完全燃焼な気分だよ……この調子だとどうして黒板にあんなメッセージを残したのかも、意味がわからない気がするよ」 「忠告。見に覚えのあるヤツならわかるし、そうじゃないならわからない。だから、あんたにはわからないんだ」 「じゃあチサにはわかるって言いたいのか?」 「――その通り」 「だけど、チサが震えてたのはお前のメッセージを見る前だったはずだぞ」 「ああ。チサが怯えた理由は携帯に届いたメールを見たからだろうからな」 「メール?」 「ああ。そうだ」 「誰からのだよ」 「MG」  またこの単語か。さっきはMGからの報いとか言っていたはずだ……タツヤはそう思い返した。 「MGって何なんだよ」 「現物がお目にかかれるとは限らないが、その目で見てくればいいじゃないか」  ナオヤはそう言ってさっきまでタツヤがいた建物を指差す。そして、感情のない表情で続けた。 「もうすぐ、チサが死ぬ。その光景を見れば、少しはMGという存在の事、そして俺が言っている事も理解できるかもしれないぜ」 「お前、本気でそんな事を言っているのか?」 「イタズラでこんな作り話を作るなんてバカげてる――そうは思わない?」  要するに誰かをからかいたいなら、もっと簡単な方法がいくらでもある。そうナオヤは言いたいのだろう。
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