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「ま、一度に全部を知るのは無理だろ。こっちも時間がないしな」
ナオヤは横目で何かを確認しながら言った。視線の先を無意識に追いかけてみたが、そこにはさっきのスーツ姿の男がいるだけだった。
「さっぱり要領を得ない。不完全燃焼な気分だよ……この調子だとどうして黒板にあんなメッセージを残したのかも、意味がわからない気がするよ」
「忠告。見に覚えのあるヤツならわかるし、そうじゃないならわからない。だから、あんたにはわからないんだ」
「じゃあチサにはわかるって言いたいのか?」
「――その通り」
「だけど、チサが震えてたのはお前のメッセージを見る前だったはずだぞ」
「ああ。チサが怯えた理由は携帯に届いたメールを見たからだろうからな」
「メール?」
「ああ。そうだ」
「誰からのだよ」
「MG」
またこの単語か。さっきはMGからの報いとか言っていたはずだ……タツヤはそう思い返した。
「MGって何なんだよ」
「現物がお目にかかれるとは限らないが、その目で見てくればいいじゃないか」
ナオヤはそう言ってさっきまでタツヤがいた建物を指差す。そして、感情のない表情で続けた。
「もうすぐ、チサが死ぬ。その光景を見れば、少しはMGという存在の事、そして俺が言っている事も理解できるかもしれないぜ」
「お前、本気でそんな事を言っているのか?」
「イタズラでこんな作り話を作るなんてバカげてる――そうは思わない?」
要するに誰かをからかいたいなら、もっと簡単な方法がいくらでもある。そうナオヤは言いたいのだろう。
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