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扉を開けて、まず視界に飛び込んできたのは、一面赤い色だった。
おかしい。さっきまでここは真っ白な教室だったはず。それがどうしてこんなことになっているんだ? タツヤはその異様な光景に動揺した。
「タスケテ、タスケ……テ……」
教室の中央。そこに真っ赤な何かが声を発している。
それが全身血に染まった人だとわかると、タツヤは腰を抜かし、床に尻餅をついた。
(何なんだ、これは……)
見たことがあるとしたら、それは映画の世界だけ。タツヤは医学生でもない。これだけの出血を見たのは初めてのことだった。
「な、何なんだよ、これは……」
見れば、その人影から距離を置くように、学生が壁に張り付いて固まっている。その中の一人の男が恐怖にかられて声を出す。
その光景を見て、教室の中央に立っているのが誰なのか確信した。
あれは――チサだ。
声を出した男はチサの現彼氏。着ている服にはべったりと血が付いている。近くにいた証拠だ。
「だ、誰か。とにかく救急車を……」
反対側から声がしてタツヤは振り替える。教壇に身を隠していた教授だった。
いや。この状態じゃあ助からないだろう――タツヤは根拠はないがそう思った。
教室の広域を赤く染めるぐらいの出血で人が助かるわけがない。その考えは間違ってはいなかった。
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