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「何か、不思議な感じの人だったね……」
ナオヤが立ち去った後、キヨミがタツヤにそう告げる。
「悪かった。嫌な思いをさせただけになってしまった」
「そんな事ない。タツヤは悪くないから……それに、日本中の大学生が死んでるのは事実だもんね」
「手がかりはなくなったけど、俺が守るから」
頼りないかもしれないけど、と付け足す。キヨミはそっとタツヤの手を解いて、タツヤの真正面に立った。
「……ねぇ、1つ聞いてもいい?」
「どうした」
「どうして私にそこまでしてくれるの?」
真っ直ぐな目。タツヤはそれを正視した。
「ただ、助けたいから。それだけじゃ、不満か?」
「下心があるからって言ってくれた方が嬉しかったかも」
遠まわしの告白。その意味が理解出来ないほどタツヤも鈍感ではない。
「全てを片付けて冷静になって。それでも俺の事が気になってくれるなら、改めて話そう」
「……そうだね」
「これからどうするかだけど――」
タツヤは考えた。チサの死に方も、タカヒロの死に方も通常では考えられないものだ。
何があっても対処できるようにするためには、キヨミから片時も離れるわけにはいかない。
「キヨミの家に戻ろうか。とにかく家にいて動かないのが安全だと思う」
「うん。わかった……2人で、頑張ろうね」
頼りになるのは自分しかいない。
孤独な戦い――タツヤは無言で大きく頷いた。
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