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……そんな事を思案しているうちに、また30人の死者が増えた。
何人の大学生が死ぬことになるだろうか。
その当事者が自分だとわかっているのに、その思いは酷く客観的なものだった。
どうせ、止められない。
止められないなら、考えるだけ無駄である。それが、こんな体になり、人を殺してきた自分の出した結論だった。
神とやらに裁かれるのならば、どうしてこんな状態の自分がいる。それとも、これが裁きだとでも言うのだろうか。
……いずれにせよ。
こんな不毛な問答を繰り返している間に、夜は明ける。
それまでに多くの犠牲者が出て、それは日が変わっても続くだろう。
では、その翌日はどうか。
自分はすべての目的を達したら消滅するのだろうか。それとも、殺していった人達が自分と同じような姿になり、復讐を果たしにでも来るのだろうか。
どれを考えても、幸せな結末などありはしない。
現世から去る事を自らの意思で決め、実行した自分に、その先に幸せが待っているはずもない。あるのは復讐を果たした後で得られる達成感か、はたまた虚無感か。
モバイルゴーストは高い空の上から、うっすらと登り始める日の光を見つめた。
自分がこれまで歩んできた茨の道。その結論がまもなく出る事になる。
「……」
――意外だった。
こんな状況下において、自分が抱いた感情は、愉悦。
最後の殺戮……それを目一杯楽しむだけだ。全てを殺し、そして自分も消える。
最高のハッピーエンドではないか。
モバイルゴーストは夜明けの空を疾走する。そうこうしている間に、死んだ大学生の数は数え切れないほどになった。
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