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力強い抱擁。溶けるような口付け。
――そして、2つのものが1つになる喜び。
全てが終わった後、ナオヤは心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「だ、大丈夫だったか?」
「……うん。大丈夫」
大丈夫だって聞きたいのは、私の方なのに。
明日で全てが終わる。それがどんな結末になるのかは、私にもわからないし、ナオヤにもわからないんだろう。
私はナオヤの胸にそっと手を添える。
心臓の鼓動が早い。でも、それ以上に体が小刻みに震えている。
気がつかないフリをして、その手をナオヤの手へと移動させる。ナオヤもそれに気がついたのか、手を握ってくれる。
「いよいよ、明日だね」
「……ああ」
「長かったね」
「……後悔、してないか?」
「後悔は、明後日からするって決めてるの」
――だって、そうしないと今を乗り越えられないから。ナオヤが私を握る手が、少しだけ強くなる。
「今から逃げてもいいんだぜ」
「……逃げないって知ってるんでしょ?」
ナオヤは「そうだな」とだけ呟いて、口付けを交わす。
私たちは、幸せにならなくてもいい。不幸でもいい。この悪夢だって、晴れそうにもない。
ただ――逃げたままじゃ、いられない。
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