3章 混沌の午後

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「と言うとこは、事件性は疑ってないということですね」  キョウヤの質問に、美樹刑事は頭を掻きながら空を見上げた。 「本当はまだなんだけど、まあ……言ってもいいか」 「ちょっと。大丈夫ですか?」  何だか秘密を暴露してくれそうな展開に、太田刑事が口を挟む。美樹刑事は鬱陶しそうに手で払った。 「うるせよ、青二才。黙ってろ!」  美樹刑事に一喝されて、ばつが悪そうに首をすくめる太田刑事。これだけで二人の力関係はすぐにわかるな。 「ヨシタカくんの件は首吊りによる自殺。こればっかりは彼の部屋に疑わしいものが何一つないんだから、これ以上の疑いようが無い」 「学校での放送の件は?」 「偶然か、誰かの嫌がらせだろ。どのみち彼の部屋に誰かが入った痕跡がない以上、そんなつまらないものに関わっていられないな」  キョウヤは静かに頷いた。異論がないわけではないが、反論する題材もない……って所かな。  確かにそうだ。ヨシタカの家に何も痕跡がなかったら、学校だろうが海外だろうが、どこで何の放送が流れたからといっても関係ないもんな。 「じゃあ、ユカリの件はどうでしたか」 「学校の屋上からの飛び降り。体育館で携帯がなった事で逃げ出したんだろ? 最後は屋上に逃げ込んで、その時に落ちた……って所だな」 「まさか、吉田先生が突き落としたとかじゃねぇの?」  俺の半分冗談のつぶやきに、美樹刑事は不敵に笑った。
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