一章 始まりの丘の遭難者

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          ●  学園都市圏の南側に位置する『始まりの丘』は学園内で最大の丘だ。  学園が敷地として持っているのはこの丘を含めた学園を中心として円状に流れる川、天城川の中にあり、それと同時に丘を超えて外側に向かうとそこはちょっとした海岸のようになっている。  丘には所々に一本ずつ木が生えている位でほとんどが高さが十五センチ位の草で一面覆われている。  名前は――、ここで学園都市設立と子供たちの良き将来を願って一本の木が植えられたことに由来する。  実際は別の名前があったのだがこれからの学生政治社会を担う学園都市の一部として国が名称を『始まりの丘』と名づけたそうだ。  そこに彼女はいた。 「今日もいい天気――」  丘の上、木陰で記念樹を背もたれに使い学園を見つめていた。  ……今日も教室でわいわいやってるのかな――。  クラスの様子を想像してみると、 「あのクラスなら今頃スポーツフェスティバルのことで盛り上がってるんだろうけど」  すぐに皆の楽しそうな風景が浮かんだ。  そんな時だった。
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