一章 始まりの丘の遭難者

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「夏樹、何言ってるの?この世界に魔法がないわけないじゃない、学園のなかの人々なら魔法を使うのはあたりまえで、むしろなくてはならないものよ?」  少年は首をかしげた。少し考え込んで、再び口を開く。 「僕はシリア……の言ってることがわからない。だって今は二〇一五年だよ?平成27年だよ?魔法なんて非科学的なものなんて――。」 「――、平成?今は新世五十六年よ?」  新世――。  夏樹にとって聞いたことがない年号。  魔法。  聞いたことのない単語とありえないはずの存在。  ……これは何かの間違いだ、夢なんだ。 「どうしたの、夏樹?顔色悪いよ、やっぱ怪我してるんじゃ――」  シリアの言葉を遮るように夏樹が答える。 「大丈夫、大丈夫だから――。でも、じゃあなんで僕……」 「疲れてるようね、いいわ。私の家この丘降ってすぐだから連れて行ってあげるから少しだけ辛抱してね――」  そう言うと彼女は制服のポケットから小さな水晶玉を取り出し唱え始めた。
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