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「――術式起動――」
再び彼女の周りに青い光がほんのりと集まりだす。
「――自書四項・物質転移、対象『飛行器(フライトデバイス)』――」
言葉に反応した光は、一点に収束を始め、やがて一個のモノに変わった。
「乗って、行くわよ――」
箒というよりもデッキブラシを装甲でコーティングしたような形の『飛行器』にシリアは乗り、夏樹に言った。
シリアの一言に夏樹は何も言わずに乗る。その顔は戸惑った様子を見せていた。だが、どうすることも、何をしたらいいのかなんて考えても無駄だと思った夏樹は言われるがままシリアに従った。
やがて飛行器はゆっくりと地面を離れ徐々に高度を上げていく。高さが十メートルに達したときにシリアが、
「今からこれで家まで届けるからー。飛行器から半径二メートルくらいは内蔵の重力装置で緩和してるから捕まってさえいれば真っ逆さまにいきなり落下することはないから安心して。その代わりちゃんと捕まっててね?」
「……うん」
気分が落ちたまま心もとないような返事で応答した。
少し間を開けてから、二人を乗せた飛行器はシリアの家へと向かった。
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