一章 始まりの丘の遭難者

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 何かあったのだろうか、ふとそんな考えが頭をよぎる。  ……いやいや、考えるのはやめよう。  そう思っていると、 「さて、こんなところで突っ立てるのもアレだし中入ってよ。疲れてるんだから、ちゃんと休まないとねー。部屋で待っててくれる?」  家の中に入ると彼女はその足で台所に向かって飲み物を用意する。コーヒーか野菜ジュースか、冷蔵庫を開けながら悩む姿を眺めつつも居間のテーブルのそばに座る。  その姿を横目に冷静になる。目を閉じて深呼吸。何も考えないで目を開けて、再び思考。  ……そういえば、居間に畳。やはりここは日本なのか。  夏樹は思う。  目が覚めたら女の子に膝枕されていた。見たこともない景色、でもどこか似ている。魔法が存在する。建物は文化が混じったように発展していて、なおかつ科学さえも進歩を遂げている。 「何故こんなところに、もしかしてここは天国とでもいうのか?」
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