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……天国――。
「はーい、おまたせー。はい、ミルクティー……」
「そうだ!思い出した!!」
「ひゃあ!なっ、なに!?いきなり……びっくりするじゃない」
何か閃いたかのような夏樹の声にミルクティーを置こうとしたシリアの手が跳ね上がる。慌てて両手で押さえるシリアに夏樹は、
「思い出した……。僕、事故に遭ったんだ――」
事故。
それはいきなりの重い言葉だった。
「いきなりだねぇ、だけど夏樹は生きてるじゃないの。っていうことは死んでないんじゃないの?」
本来ならあの時夏樹は意識不明の重体だったはずだ。ただ違ったのは走馬灯のように時が遅く進む感覚を身に受けた時、誰かが何かを囁くように言った、暖かい温もりを感じると共に。
夏樹は声を思い出した。
「そう、それに聞いたんだ。誰かが僕に『今度はあなたが返す番だ。強くなれ』って言ったのを。でも言葉だけで、どんな声だったかまでは覚えてないし……もう一度聞けばわかるかもしれないけど……」
曇った表情で俯き、座る夏樹に彼女は言った。
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