序章 変わらぬ生活と存在意義

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          ●  一面の青い空。  白い雲と言いたいが、あいにく今日の天気は晴天で雲は一つも見当たらず日差しが突き刺すように照らしている。  暖かい風に揺られて草木が揺れる。  周りは見渡す限り盆地のように山で囲まれている。見渡す限り山と緑が溢れんばかりで青いのは空くらいだ。  今にも透明なガラスのコップに氷を入れて凍るように冷えた水が飲みたいくらいの暑さは容赦なかった。  今日も屋上で転落防止の柵の所で一人の人影があった。  何もかもを見透かしたような眼差しで目の前の風景を見渡す背中はどこか寂しそうな面影があった。  その少年は呟くように、 「嫌な世界、楽しいことなんて無いな。夢で見た世界は楽しかったのに――」  子供には社会に従って生きるしかない。それに権力を持ってしまったら自分のことしか考えなくなってくる。
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