二章

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 咳払いを一つする。恥ずかしいのを何とか誤魔化して、話を次に進める事にした。 「時に少年よ」 「何だい兄さん、そんなに余所余所しいなんて、あんまりじゃないか」  俺の態度が癪に障ったか、ぶすっとする少年を微笑ましく思いつつ、俺は疑問をぶつける事にした。 「一体全体、何で俺が闘うと不可思議なのだ。戦うのが普通ならば、俺はそのメインストリームを走っているのではないのか」 「……ああ、寧ろ僕が異端に見えるかも知れんねぇ。僕も、今の話を聞いただけだと、誤解していたに違いない」  いや、知れないではなく、断定なのだが。彼の方が余程詳しいみたいだから、取り敢えずは口を噤む。暫し待つことにした。  えっとね、と言い始めてから少しして、少年は話を始めた。 「あの歪な巨人は、今まであの世界に呼び出された愚かなるは、何人たりとも生きてやしない、って言っていたんだもの。僕よりも、もっと珍(めずら)かだよ」  ……成る程ね、それは何とも複雑怪奇だ。  しかし、まず一つ、俺のような人間は、過去には何人か居た事。二つ、彼等もまた異世界に召喚されている事。そして三つ、俺のように戦える連中はそうはおらぬという事。これらは、新たな知識として俺の中に蓄積された。  そしてこれらから導出される事として、更なる仲間の可能性の浮上が挙げられる。  今までは想定に過ぎなかったが、今、確かな根拠が得られた。仲間は、得られる! 「ふう、全くひどい目に遭ったものだ」 「兄さんはね。僕は楽しかったよ。ところで、どうやって兄さんが勝ったのか、是非に知りたいな」  そう言う少年の顔は、にこにこと笑い、甚(いた)く期待しているようであった。何から話そうかと考え、現れた竜の様相から布の特色等を大雑把に語ろうか、と決定し、口を開いた。
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