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四章
あれほど皆を愛したあなたの心は、
なんとも遠くへと行ってしまったのか。
たとえ自分が破滅の危機に瀕しても、
はたまた友が殺されようとも、
もう絶対に偏った愛を見せないよと、
うそを空に叫んでいたのか、あなたは。
混ざり合ったあなたの中の感情は、
乱れに乱れて昔の面影を失ってしまった。
へんな事を言うようだが私はあなたに、
のろしをあげたんだよ。
穴に。大きな穴に落ちちゃって、
にっちもさっちも行かなくなってさ。
落ちていく事だけはしっかり分かった。
ちみどろになっていく我が身を、
ただ見ているだけでありました。
呼んでも来ないあなたを紅化粧で永久に待っています。
俺はこの紙を、お前がいたあの病室で発見したんだ。あれは、三日も前のことじゃない。詳しくは覚えてはいないが。
字面から見て、青年が書いたんだって分かったよ。汚ならしい詩で、脈絡も無いし、何かを伝えるつもりも無い。何なんだ、大切な紙を使いやがって。
ナニ、これが欲しいのか。ほら、呉れてやるよ。ボウズも物好きだなぁ。こんなもん、研究にも値しない気もするが、まあ持っていきな。
しかしお前さん、何歳だよ。ほぅ、小学校三年ってところか。そうは見えん。俺の倅(せがれ)の方がよっぽどガキだ。最近、何処かで仲間とつるんだか知らんが、偉くリッパになりやがった。
昔から家内を殴ったりしたから、どうしても許せん。ここは一つ、懲らしめてやりたい。
ナニ、俺の息子を、お前が。ははは、冗談は止せ。そんなちんちくりんが、あのちんぴらに何が出来るのだ。せめて一回り大きくなってから、だな。
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