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やっぱあれ遅かったのか……。
「で、なんで遅れたんだ?」
担任が、厄介な生徒が来たとでも言わんばかりの顔で聞いてくる。
これはちょっといただけない。早くも問題児のレッテルを貼られては、今後色々と困る。てゆうか俺は問題児じゃない。
ここはなんとしても、自分の責任を回避しなければならない。
俺の天才的演技力が発揮される瞬間だ!
「あいつは……俺を束縛して離さない……。いったいいつまで苦しめられるのか……。全てはあいつのせいで……!俺は悪くないのに……!!」
「で、なんで遅れたんだ?」
普通に無視された。
どうやら完全に逆効果だったようだ。
不思議だ……俺の迫真の演技が意味をなさないなんて……。もしかしてこの担任は、他人の不幸とかには何の関心も示さない冷酷な人間なのだろうか。
仕方ない、普通にしよう。
「はいはい、ただの寝坊ですよ。」
「そうか、じゃあ早く席に着け。」
「はいわかりましたー。」
まあ前にいても何の意味もないし、自分の席に向かう。
なんか周りの生徒の視線が痛かったけど。
席は出席番号順に並んでるので、やっぱり俺の席は浩輝と優奈の間。
「お前の度胸は、他の誰にも負けないな。」
「つまりは、人類で最も馬鹿、ってことですか?」
俺の扱いは、中学の時とあまり変わらないようだ。
「ありがとう、褒めてもらえて嬉しいよ。」
「誰も褒めてません。」
「なんであれ、一番になるのはいい事だ。」
「一応言っておくが、その考えは間違ってる。」
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