アバンタイトル

9/9
358人が本棚に入れています
本棚に追加
/1511ページ
 青年は鏡の前へ立つと、ハンガーに掛けたコートを取り、袖を通しながら、髪を手櫛で整える。ファスナーをキチンと閉め、身だしなみに満足すると、彼はロウソクの火を手で揉み消して、机に立て掛けていた1メートルほどある包みを持って扉へと向かう。  青年は歩きながら、忘れ物を思い出して急いで後ろに戻る。 「忘れる所だった……」  机の上にある小さな箱と、懐中時計を内ポケットに仕舞い。近くに有った腕輪を付けて、納得して歩き出す。そして、またふと立ち止まる。何か足りない。 「?……あれ?おい!キサク、いつまで遊んでんだ。行くぞ!」  青年は、まだ遊んでいた小動物に部屋から出るよう手で促すと、小動物は紙屑を放り出して部屋の外に走り抜ける。  青年は部屋をもう一度見渡す。この世界に出来た自分の居場所。少し、古ぼけた物置のような自分の部屋を眺めると、彼は静かに扉を閉めた パタン...... ~ こうして……彼、“神島一希(かみとうかずき)”の戦いがまた始まる ~
/1511ページ

最初のコメントを投稿しよう!