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バケツの水ををひっくり返したように雨が降る中、城の処刑場にて一人の少女が処刑された。
少女の体は首と胴体に分けられ、処刑台には残った胴体のみが横たわっている。
胴体から流れる血は激しく降る雨と混じり、赤黒い血だまりと化して石の地面を汚していく。
その様子を、死刑執行を務めたサイアスという男が断頭台の上から見下ろしていた。
少女を殺した男の目は冷たく、少女の死体をその辺に置いてあるゴミのように見ている。
サイアスは割り切っていた。
もし殺した人間のことを考えていたのなら、人としてどこか壊れてしまう。
ゆえに彼は処刑するときに何も考えず、少女を人として見ず、処刑した。
サイアスは手振りだけで部下に撤収を命じると、部下たちは素早く処刑場を後にする。
サイアスもまた、少女の胴体を担ぎ上げて、城のはずれにある収容上に向かうのだった。
「隊長、おつかれさまでした……」
そうサイアスに語りかけるのはサイアスの部下の内の一人、カルロであった。
まだ軍に入って日が浅く――未だ戦闘の経験すらない新入りである。
この度は処刑の補佐を務め、サイアスよりも近い位置で少女の死を見ていた男だ。
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