エミール英雄記

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 カルロの役割は暴れる死刑囚を抑えることであったが、少女は一度も抵抗することがなかったので、一番楽な担当であった。  少なくともサイアスはそう思っていた。  彼の服には少女の物と思われる血が付着しており、彼の額には血を拭ったような後がくっきりと残っている。 「何度見ても……慣れるものじゃないですね」  カルロがそう言って作り笑いを浮かべるも、その表情はやや苦しげだ。  サイアスは相変わらずなカルロにかぶりを降る。 「お前はいつまで新入りのつもりだ? いい加減に慣れたらどうだ」  カルロが入隊して日が浅いと言っても、もう五か月も昔の事だ。  彼と同期の軍人を見ても、そろそろ慣れてもいい頃合いである。 「それもそうですね――そういえば、どうして誰も籠を持ってこないのですか?」 「王が自ら仰ったことだ。きっと何か考えがあるのだろうさ」  この国の王が言った事である。  いくら隊長であるサイアスと言えど、王の意向を問うことはできるわけがなかった。 「それもそうですね――それではここで失礼します」
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