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カルロは一礼をすると、雨が降る中、木陰の方に走っていった。
未だに死体に慣れることができず、その度に具合を悪くする。
人に優しく、戦場が似合わない性格の持ち主。
カルロという男はそういう男であった。
「さて――後ひとり」
この日の処刑は、二回に分けて行われることになっていた。
通常であれば、少女を処刑した後、その翌日にもう一人を処刑するのが今までの慣わしであった。
それを曲げてまで、処刑を同じに日に執り行われるとなると、軍に長く身を置いているサイアスでなくとも勘ぐってしまうだろう.
しかし、サイアスにもどうして二回に分ける必要があったのかわかっていない。
それもまた、王が決めたことであった。
ならば、サイアスが取る道は王に従い、刑を執行するだけである。
サイアスは収容所で少女の遺体を片付けると、その男のことを考えながら城への帰路に着いた。
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