私立聖ブルージョークス女学院2

6/32
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「はあ、いろいろ難しいんですねえ。あ、とにかく何となく分かりました。ありがとうございました」  それから環は片山と一緒に会議場へ向かった。クラス委員全員を集めて運動会で行う競技を考える集会があるのだ。環は片山と二人でその取りまとめを担当する事になっていた。  久しぶりに片山と肩が触れ合わんばかりの近距離で並んで歩いて、環は密かに心臓がドキドキしていた。片山はそれを集会の前なので緊張しているのだと思って笑って環に声をかけた。 「そんなに難しい仕事じゃないから。大丈夫だよ」  だが、いざ集会が始まって生徒が意見を声に出し始めると、片山もの方が焦って冷や汗まみれになってしまった。生徒たちが提案した競技は…… 「男女混合リレー!」 「男女混合騎馬戦!」 「男女混合ビーチバレー!もちろん水着で!」 「ちょ、ちょっと待ちなさい!」  たまらず片山が大声で生徒たちを制す。 「うちが女子校だという事を忘れたのか?どうして男女混合ばかりなんだ?」 「だって先生」  男女混合ビーチバレーを提案した子が立ち上がって不満そうに言った。 「今年の運動会は昇天日に合わせたんでしょ?」 「いや、それはその通りだが……」  意味が分からず絶句してしまった片山を押しのけて、環は演壇に立ちマジックペンでホワイトボードに書いた。 「主の昇天日」  そしてその下に英語で「Ascension Day」とさらに大きく大書した。それから会議場の生徒全員に向かって言った。 「昇天を英語ではこう書きます。この単語、アセンションというのはね、今いる所より高い所へ行く、という意味です。昇天日というのは、イエス・キリストが一度十字架で処刑されて死んだ後、また生き返って弟子たちに教えを説き、改めて天に昇った日、という事。人間界から、神の世界と言う高い所へ昇った。そういう意味です」  ここで環はひとつゴホンと咳払いをし、声のトーンを思いっきり上げて続けた。 「だから、あなたたちが今考えている『昇天』とは、多分、いえ絶対に、意味が違ってます!イエス様を怒らせて神罰落とされたくなかったら、いいかげん女子だけで出来る競技を考えなさい!」  運動会の当日は抜けるような五月晴れだった。男女混合競技は無事に全て却下され、全てのプログラムは順調に進行して行った。午後になって借り物競走が始まり、観客席から引っ張り出される生徒の家族らしい人たちがちらほら出ていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!