私立聖ブルージョークス女学院2

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 さっき片山が目をやった方向に環が視線を向けると、木の陰から小柄な女生徒が一人、逃げるように走り去って行くのが見えた。  環はピンと来た。多分、片山の気のせいではなく、本当にストーカーみたいに彼を見つめている女生徒がいるのだろう。やれやれ、と環は思った。環も想いを寄せているぐらいだから片山ももてないタイプではないが、女子高生が熱を上げるほどの超美男子というわけでもない。  女子校にいると普段周りに男がいないので、比較的若い男性教師に異常に疑似恋愛感情みたいな物を抱く生徒がいると聞いていたが、どうやらそういう相手に片山は目をつけられてしまったらしい。  パネルの設置には思いのほか時間がかかり、一枚固定したところで雨がぱらつき始めたので、その日はそれで解散という事になった。  校舎の一階まで下りて職員室のある棟へ続く渡り廊下を二人で歩いている時、環は建物の陰に身を潜めてじっと片山を見つめている小柄な女生徒の存在に気付いた。さっき屋上から見た、木陰から走り去った女生徒と同一人物だろうとは思ったが、現時点で何かをやらかしたわけではないし、とりあえず何も言わずにいた。片山はその女生徒には気づかなかったようで、自分の肩を手でもみながら環に言った。 「いやあ、自家発電にもっといい道具はないもんかな?あれはしんどい」 「確かに。それに梅雨になると発電量も落ちますしね」  翌日、環は夕方片山が帰宅した後の彼の靴箱の近くの物陰に身を潜め、薄暗がりに向かって目を凝らしていた。  案の定その人影は現れた。それは九条院若菜という一年生で、お嬢様学校として知られるこの学校でもかなり家柄のいい筋金入りのご令嬢であるらしい。その分相当に世間知らずなところがあって、親がこの学校の寮に入れたと聞いている。  ツインテールの髪を長く垂らした慎重50センチに満たない、一見中学生みたいに幼い印象の子だが、こういう子ほど思い込みが激しく何をやりだすか分からない事を環は同性ゆえによく知っていた。  彼女が片山の靴箱の中に少し大き目の封筒を押し込もうとしたところで、環はおもむろに姿を現しその女生徒の腕をつかんだ。 「ちょっと、九条院さん。何をやっているのかしら?ラブレターなら止めませんけど、その封筒、ラブレターにしてはちょっと大き過ぎるわね」
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