私立聖ブルージョークス女学院2

9/32

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 九条院若菜は突然現れた環に完全に圧倒されてしまい、うつむいてその場で押し黙ってしまった。環が封筒を開いて中味を取り出すと、数枚のデジタルカメラで撮った写真をプリントした物が出て来た。あきれた事にその全部が少女のパンチラ写真だった。  だが、そこに映っている制服は明らかにこの学校の物だし、そこに映っている幼さの残る下半身も見覚えがあった。 「九条院さん、これはあなたが自分で自分を撮った写真?」  そう詰問する環に女生徒は力なくうなずいた。 「こんな物を片山先生の靴箱に入れるなんて、一体どういうつもり?」 「だって!」  その少女は急に顔を上げて涙目で叫んだ。 「片山先生がもっといい道具がって……あたし、せめて何かお役に立ちたくて」  ああ、そういう事か。環は彼女に一緒に来るように命じ、前日片山と二人で作業した校舎の屋根への出口まで九条院若菜を連れて行った。屋根裏部屋の蓋を上げて太陽光発電パネルを指差しながら言う。 「九条院さん、あれが何だか分かる?」 「え?ああ、太陽光発電の機械ですか?」 「そう。片山先生が言っていたのは、あれの事です。片山先生自身の『自家発電』じゃありません!仮にそうだとしてもね、あんな写真先生に持たせたら青少年健全育成条例違反で捕まりかねないでしょうが!あなたは片山先生を前科者にする気ですか?!」  私立聖ブルージョークス女学院にはチャペルに勤務するシスターたちが運営している植物園がある。様々な草花、ハーブなどが栽培されていて、生徒たちの理科の授業の教材や情操教育にも使われている。  あれ以来、性懲りもなく片山に対してストーカー的言動を繰り返す九条院若菜を追いかけ回す毎日が続いていて、環はちょっと精神的に疲労を感じていた。精神安定作用のあるハーブでも分けてもらおうと思って立ち寄ったのだった。  ガラスの壁で覆われた一軒家ほどの大きさの植物園の前のベンチでは、まだ若い一人のシスターが座って聖書を読んでいた。環が事情を離すとそのシスターは笑顔で承諾してくれた。服のポケットから鍵束を取り出しドアのカギを開ける。驚いた事に三つも頑丈な錠前がかけられていた。  中に入ってシスターと並んで歩きながら環は訊いてみた。 「ずいぶん厳重に鍵をかけていらっしゃいますね?泥棒でも出るんですか?」  シスターは上品に笑いながら答えた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加