廃城の記憶姫

流星の祭り

　そう、祭りが始まって以来の特別な年。

　今年はリリア姫が祭りの歌姫を務めるのだ。

　リリアがお辞儀をすると、かがり火が半分になり、星空が先ほどよりも明確に、つかめそうなほど近くなる。

　流れ星が、スウッと一つ流れたのが合図だったように、リリアは歌い始めた。

　甘く、優しく、透き通るような声。

　村人の心を震わせるそれは、星さえ震わせ、いくつも星が流れ、満天の星空に吸い込まれていく。

　空を見つめていた村人が再びリリアを見ると、目を丸くした後、彼女から目が離せなくなってしまった。

　彼女の濃紺のドレスにも、いくつもの星が流れていた。

　少ないかがり火が、彼女が歌い動くたびに、金糸や銀糸の織り込まれたドレスに、星を降らせる。

　誰もが、この祭りと歌姫の歌に心を奪われ、うっとりと聞き惚れていた。

　リリアが歌い終わると、数秒間静寂に包まれた村は、すぐに大歓声に変わった。

　お辞儀をしたリリアは顔を上げると、無邪気な笑顔を見せる。

　その年の夜空は、いつも以上に星の涙を流したと聞いた。

　村人の心と姫の歌声に惹かれた、とある一人の少年の心に、この祭りは深く刻まれたのだった。