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「ラギス、よく聞いて。リリア姫が亡くなったの」
そんな母の言葉を聞いたのは何年前だっただろうか。
思いだされるのは、最後に無邪気に笑った姫の顔。美しき歌声。
当時6歳だったラギスがもう16になるというのだから、10年も前になる。
リリア姫が亡くなって世界はどうかわるのかと思ったが、村は10年経った今も特に変り映えのない風景が広がっていた。
変わったと言えば、森の向こうに見える廃城には誰も近づかなくなったことだろうか。
村の牧場を抜けた先には、森が広がり、その中に埋もれるようにして城は建っていて、青い屋根と白い城壁が少しばかり見える。
姫を亡くした王と王妃は悲しみのあまり、後を追うように立て続けに亡くなったと聞く。
亡くなった姫の歌を聞いたとか、その姿を見たなど、あまりよくない噂が広がり、大人たちは子供に決して城に近づかないよう、忠告していた。
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