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「大丈夫そうよ、出ていらっしゃい」
ゆっくりと白いカーテンが両側に開き、そこから出てきたのは前島美鈴だった。俺は言われるまでもなく、先生の意図を理解した。
「こんな手の込んだ事しなくたって、前島の事を言い触らしたりする気はないですよ。分かりましたよ、お互いに秘密って事で、それでいいんでしょ?」
園田先生は俺の両手を握って一方的にブンブン上下に振った。
「さすが松陰君。君なら分かってくれると思ってたわ」
前島はほっとしたのか、よほど不安だったんだろう、近くの椅子にへたり込むようにして座って放心したように宙を見つめていた。園田先生は雰囲気を変えようとしてか、インスタントコーヒーをカップに3杯作り、俺と前島にも手渡した。俺は別にのどは乾いていなかったし、この暑い中ホットコーヒー飲みたくはなかったが、断るとまた気まずくなるのを恐れて無理やり口に流し込んだ。
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