第2話

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 俺は一瞬何のことか思い出せなかった。あの日先生から託されたディスクの事だと気づいた時、俺は全身が震えた。あれを「ゼンカクレン」とか言う組織の本部に届けてくれっていう、あの話か?  俺は条件反射的に前島を止めようとした。何だかよく分からない怪しげな話だし、それにもし先生の言っていた事が全部本当なら、それは日教連にとって都合の悪い話だろ? 夏休み中はいいとしても、新学期になったら学校で何が起きるか分かったもんじゃないし、いやそれ以前に「ゼンカクレン」の本部にたどり着く前に……  だが前島は決然として行く、と言い張った。 「松陰君が気が進まないなら、あたし一人で行く。もしあれを届ける事が出来たら先生の転任の話をつぶせるかもしれない」  俺は驚いて前島の横顔を見つめていた。どっちかと言うと大人しいを通り越して内気で弱々しい感じのこいつの、どこにこんな度胸があるんだ? 俺もここに至ってやっと覚悟を決めた。 「分かった。じゃあ、俺も行く。女のおまえ一人を行かせたら、俺のメンツが立たねえよ」  それから三日後の夏休みに入ったばかりの日、俺と前島はそれぞれ男子、女子の友達とキャンプに行くと嘘をついて家を出た。俺と前島は別にそんな関係じゃないが、さすがに中3の男女が泊りがけで一緒に行動するとは親には言えないからな。  園田先生から渡されたブルーレイにくっついていた地図を頼りに、俺たちは「ゼンカクレン」という組織の本部に行ってみる事にした。それが一体どんな組織で、どんなメンバーで構成されているのか、俺にも前島にも見当もつかなかった。だが園田先生があんな事になった今、俺たちは藁にもすがる思いでそれに賭けてみるしかなかった。  俺たちはまずJR新宿駅で落ち合った。前島は学校で見る時とはうって変わって、淡いピンクのジーンズにスニーカー、上は薄いブルーのタンクトップに七分袖の薄い上着という女の子らしい格好だった。小さな布製のショルダーバッグを抱えて、いつも三つ編みにしている髪は下ろして大きな髪留めを横に付けていた。
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