第2話

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 服装次第で女は印象が変わると言うが、俺は妙にドギマギしてしまった。まあ長時間の移動になりそうだし、ひょっとすると田舎道を歩くことになるかもしれないので、そういう服にした方がいいと言ったのは俺だし、俺も青のジーンズとTシャツにぼろいリュックという格好だが、普段見るのと全く違う服装、髪型の女子って、なんか妙に気になるんだよな。  それに前島って、普段はいかにも本好きの女子って感じで、ダサいってイメージしかなかったが、女らしい髪型にするとこうも可愛く見えるものなのか? 前島が俺の視線に気づいてちょっと怪訝そうな顔をしたので、俺はあわてて目をそらして。いかん、いかん。こんな事を考えている場合じゃない。これじゃふた昔前のラブコメだ。  とりあえず2千円チャージしたスイカというJR東日本のプリペイドカードを持って改札を通り、中央線のホームに向かう。まずは立川という駅まで行って乗り換えだ。だが、前島がいきなり俺の腕を痛いほど強くつかんでジュースの自動販売機の陰に引きずり込んだ。思わず声を上げようとする俺の口を正面から両方の掌を押し付けてふさぐ。  何だ? と思っていたらすぐに理由が分かった。俺たちが隠れている販売機の向こう側を歩いている二人、あれは俺たちの学校のセンコーだ。周りが騒がしくてあまりよく聞こえなかったが、その二人は携帯電話でこうしゃべっていた。周りの音が大きいせいか、その話し声も自然と大きくなった。 「あ、はい。その二人が持っている……ブルーレイディスク……」  俺の腕をつかんでいる前島の手に一層力が入った。俺もすっと背筋が冷たくなるのを感じた。このセンコーたち、俺と前島を追っているのか? 学年とかの担当が違うので、俺はその二人のセンコーはよく知らない。その二人は電話を切り、こう話し始めた。 「しかし先生、見つけたとして、どうやって連れて行きます。手荒な事をするわけにはいかないでしょう」 「なあに、不純異性交遊の取り締まりという事にすればいいんです。しかしどっちへ向かう気だ? 全革連の本部というのはどこにあるんだ?」  これでもう間違いない。園田先生が俺たちに預けた例のディスクを狙っているんだ。だとしたら、俺たちを探しに町に出ている教師は多分もっといるんだろう。
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